ハッピー月経ライフナビゲーター〜井上ルミさん〜「けやき小屋」を主宰・布ナプキンの手縫いワークショップを開催!
ハッピー月経ライフナビゲーター・「けやき小屋」を主宰・布ナプキンの手縫いワークショップを開催!
2019版「BLOOMメンバーへのインタビュー企画」。今年のインタビュアーは池内詠子。フリーアナウンサー・司会者として様々なジャンルの方々にインタビューをしてきた私、キャリアコンサルタントとしても多くの方々に話を聴いてきた。そんな私が、働く女性たちに仕事の話はもちろん、生き方、家族、心の声、夢、リアルな本音に迫ってみる。
井上ルミさんとの出会いは、彼女が手縫した布ナプキンからだった。WFC周年パーティーで彼女の布ナプキンを手に取った時、なんだか温かい感情を自分の中に感じた。これを作ったのはどんな女性だろう?
第15回 ハッピー月経ライフナビゲーター 井上ルミさん
彼女のストーリーは衝撃的な話からスタートする。ルミさんは、今のいわゆる#metooの流れが起こる以前から、彼女の体験を公にしている。
ルミさんは小学校低学年のある日、“知らないおじさん”から性的暴行を受けた。
命からがら何とか逃げた。これは誰にも言ってはいけないんだ、誰かに話せば見つけられて殺されるかもしれないんだ・・・それまで活発だったルミさんは、このことをきっかけに変わってしまった。それからずいぶん長い間、自分の気持ちを表に出せなくなってしまった。お友達といても、何を話していいのかわからず、一人で本を読んだり、絵を描くことが好きだったという。孤独なことが多かった。
そのせいか高校時代の記憶はほとんどないという。絵や歌・・・得意なことを生かす道はないか…。保育士になりたい、と考え、短大の保育科に進学した。
急に自分を変えることはできなかったが、短大で聖歌隊に入り、部長を務めたそうだ。責任感の強いルミさんにはこれがプレッシャーではあったが、周りのサポートもあり、大きなリサイタルを開催することができたそうだ。
卒業後、桜井市の公立の保育所で日々雇用(アルバイト採用)で勤務を開始。1年後に正規雇用の試験を受け、正職員で約4年保育士として働いた。
辞めた理由は体調の悪化だった。椎間板ヘルニアに悩まされ、過呼吸で救急に運ばれたこともあったという。点滴を打ちながら頑張っていたが、限界を感じ、退職した。
当時、保育所で一緒に働いていた先生が託児所を開設、そこにルミさんは誘われ、約6年間、0歳から5歳までの保育をしていた。
運命的な出会い・結婚
ルミさんが結婚したのは28歳の時だ。
ルミさんのお母さまとご主人のお母さまは幼なじみなんだそうだ。そして、お母さまたちは、なぜかお墓まいりに行くといつも偶然出会うという不思議なことを繰り返しておられた。しかも、ご先祖さまのお墓はお隣どうしだという。
ある時、どちらの子どもたちも適齢期だから会わせてみたらどうだろう・・・という話になった。
待ち合わせの場所はホームセンター。送られてきた写真を見ながらルミさんは“その人”を探した。見つけた時、第一印象で「この人や!」と思ったという。
その直感を信じて、ルミさんは押して押して押しまくったんだそうだ。1年半ほどの交際を経て結婚。2人の男の子が続けて誕生。ご長男を保育所に預け、ご次男を連れて、託児所での仕事に復帰した。しかし、なかなかのハードワーク、ご主人もルミさんを心配し、退職することになった。
少し子育てが落ち着いた頃、ご長男5歳、ご次男3歳の時にパートで、企業内の食堂で働き始めた。
「けやき小屋」ナビゲーターに
ルミさんには、難病指定されている病と闘う弟さん、そしてアトピーと喘息に苦しむ妹さんがいた。ルミさん自身も保育士時代に体調を崩した体験、そして結婚後、花粉症に悩まされたりしていた。
世の中にはなぜ原因不明の病気が多いのか?自分の子どもたちをそういうものから守りたい!子どもたちを寝かせたあと、ネットで調べたり、本を読んだり、息子さん2人を連れてセミナーを受けに行ったこともあった。
今まで安全だと思って使っていた一般的な市販の日用品や食品などが、実は身体に有害な化学物質が使われている事実を知った・・・衝撃だった。身体には解毒作用や免疫力もあるが、免疫のバケツがいっぱいになった時に症状として溢れ出すことを知った。身の回りのものを人にも地球にも優しいものに少しずつ変えていった。
布ナプキンのことを知ったのは、まだ託児所で働いていた頃。時間的にも、布ナプキンに変更するには絶対無理だと感じたが、思い切って布ナプキンに変えた。
半年ほどして変化があらわれた。まず、最初に生理痛がなくなった!紙が布になっただけで?そして、さらに、期間や量なども、変化した。これはいい!みんなにすすめたい!もっと使いやすいものは作れないだろうか?試行錯誤を、繰り返し、第1号品が完成した。約10年前だ。イベントに出かけては、お手頃価格で販売した。注文が増えていった。
その頃、やはり布ナプキンを使用して、全国に”けやき小屋”を広める活動をしているひらやませいこさんのことを知る。これを読んでおられるみなさんは、”けやき小屋”というものをご存じだろうか?
かつて日本全国に、神聖な木、けやきで作られた小屋があった。月経中の女性はけがれているとされ、農作業にたずさわることも許されなかった時代、月経中の女性たちが小屋に集められていた。そこはさまざまな年代の女性たちの交流の場でもあり、悩みを語り合う場でもあったという。けやき小屋は女性の社会進出と共に廃れ、明治初期には廃止されたそうだ。
そのけやき小屋を現代に復活、全国に広めているのがひらやませいこさんだ。ルミさんは、ひらやまさんの、けやき小屋ナビゲーター養成講座を受講、資格を取得した。
そして、ルミさんのけやき小屋が開設された。ご主人のご両親さまも住んでいる自宅の古民家を利用したけやき小屋だ。
かつて女性性を完全に否定し、自分の考えを出せなかったルミさん自らが自分の体験を開示する。そこに集った女性たちも、自分の苦しみ、悩み、家族のこと、性の悩み、生理のことなどを聴き合い、話し合い、共感し合う。
ルミさんはけやき小屋に来てくださる方に合わせて、自分の引き出しから話題を出してきてお話しているという。悩みを抱えて訪れた方は、口々に気持ちが楽になったと帰っていかれるという。
ハッピー月経ナビゲーターとして
ルミさんが子ども時代に受けた性的暴力の体験をご主人に話したのは、ご次男が保育所の頃。3人目のお子さんをのぞんでいた頃だ。女の子を授かりたいという気持ちとは裏腹に、性的暴力を受けた心の傷が女の子を育てることへの不安に繋がっていたのだ。ご主人にそのことを打ち明けた時、上から光が降りてきた感覚を抱いたそうだ。その光とともに3人目のお子さん、女の子を授かったのだとルミさんは語る。
現在お嬢さんは小学校1年生。「お客さんのばかりズルイ!」というお嬢さんのために布ナプキンを縫ってあげると大喜びして「お漏らししたらあかんからあてておくわ!」と楽しんで使っているんだそうだ。
お嬢さんにどんなふうに生理の説明をするの?と聴いてみた。
「女の人のお腹の中には赤ちゃんを育てる命のお部屋があって、お姉さんになったら赤ちゃんを迎える準備が始まるの。栄養満点の血のベッドを命のお部屋に作るんだけど、そのベッドがずーっとお母さんのお腹の中にあると古くなってお母さんがしんどくなるし、来てくれた赤ちゃんもしんどくなるので、毎月古い血のベッドをお掃除して外に出し、また新しいベッドを作るんだよ。」
ルミさんは4年前にネットショップをオープン。布ナプキンを手縫いするワークショップを開催したり、大人向け・中高生向け・親子向けの講座を行っている。高校で女子生徒に生理のお話をする講師として出向くこともあるんだそうだ。
ルミさんに夢を伺ってみた。
まず、手描きイラスト満載の約100ページにも及ぶ手作り本と、布ナプキンBOOKを書籍化すること。そして、ママがお子さんに読んであげられるような生理の絵本や紙芝居を作成してみたいと話す。
「けやき小屋をすること、そこで生理の話や性の話をすること。これは自分の使命だと感じている。生まれる前からそう決まっていた、そんな気がする。」
井上ルミさん
ネットショップ・https://www.nuno-napukin.jp/
ブログ・http://https//ameblo.jp/rainbowclover/
facebook・http://https//www.facebook.com/inoue.rumi1
instagram・https://www.instagram.com/nunonapu_rainbow.clover/
池内後記
ルミさんの作った手縫いの布ナプキンを手にとったときの、あのぬくもり。ルミさんのこれまでの人生をうかがっているとルミさん自身からもぬくもりが溢れてくるのを感じた。けやき小屋で、悩む女性をそのぬくもりで包み込んでいる。
ルミさんの手作り本を実際に見せてもらった。これが書籍化され、多くの方々の手に届くよう、私も応援したい。