煎茶道副家元〜林貴子さん〜急須でお茶を淹れて飲む人口を増やしたい!
照浪庵小笠原流煎茶・副家元・急須でお茶を淹れて飲む人口を増やしたい!
「2019版・BLOOMメンバーへのインタビュー企画」今年のインタビュアーは池内詠子。フリーアナウンサー・司会者として様々なジャンルの方々にインタビューをしてきた私、キャリアコンサルタントとしても多くの方々に話を聴いてきた。そんな私が、働く女性たちに仕事の話はもちろん、生き方、家族、心の声、夢、リアルな本音に迫ってみる。
林貴子さんは、照浪庵小笠原流煎茶 副家元である。お母様が第二十世のお家元。
生駒市のご実家にはお稽古場がある。貴子さんは物心ついたころから、あそこはお稽古場だと認識していたそうだ。
第28会 照浪庵小笠原流煎茶 副家元 林貴子さん
「いつから始めるの?するならきちんとしなさいよ。」お母様からはそう言われていた。5年生になったら、と自分で決めていたそうだ。お稽古を通して「静と動」を、そして自分と向き合うことを学んでいった。
煎茶道とは
抹茶を茶筅で点てる茶道(茶の湯)に対し、煎茶や玉露などの茶葉を使い急須で淹れるのが煎茶道。茶道の茶室と比較すると、茶室も開放的、自由な喫茶とも呼ばれるとか。お抹茶は教養、お煎茶は趣味とも言われる。シンボルが蟹…真っ直ぐ歩きたくない…文人好みとも言われる。
お抹茶より、約100年遅れて普及し、そのお作法の中には中国的なものが濃く残っているそうだ。
貴子さんが学生時代に、おばあ様からお母様にお家元は引き継がれたという。貴子さんは短大に進学、幼児教育科で学び、卒業後は保育士として約7年勤務した。
そして27歳の時に結婚。広島出身のご主人が大阪に遊びに来ている時に知り合い、遠距離恋愛を経て結婚した。
自分の手でしっかり子育てをと考え、いったん退職し、2人の息子さんを出産。子育てをしながら、少しずつ仕事復帰していった。叔母様の会社のパソコン作業を在宅で請負ったり、パートで飲食店やコンビニで働いた。
もちろんその間もお稽古は続けておられ、35歳の時、副家元という立場になった。以降、常に、自分自身の立ち位置を確認するようになったという。
副家元として
副家元となり、生徒さん達一人一人の存在を大切にし、お茶の会では、何かの役目を担当してもらい、それに対し、感謝の気持ちを忘れないことをいつも心がけるようになった。
生徒さん達が自信を持って、お茶会に参加できるように、どのように声掛けすれば、気持ちよくお茶会やお稽古に参加してもらえるか…そして、お家元が看板として輝ける存在でいられるよう、常に心を配る。お家元の秘書的な役割でもある。
お稽古の他に、貴子さんが取り組んでいるのが、和のマナー。
立場上、一般常識を聞かれることも多いという。講座「今更聞きにくい大人の和のマナー」は、好評のマナー講座だ。
お茶を楽しむ
お茶を家庭で美味しくいただく方法を聞いてみた。
3つのコツがあるという。
1お茶の量
2お湯の温度
3待ち時間
茶葉の種類により、量は異なる。温度は、例えば煎茶ならば80度前後のお湯が適温だ。沸騰したお湯をいったんお茶碗に。それを急須に戻して、お茶を煎れる。だが1番大事なことは、楽しむこと!家でホッとする時間を楽しむこと!
貴子さんの今年の目標は…
「急須でお茶を淹れて飲む人口を増やす!!!」
小学生に、家に急須がある人?と尋ねると、「ない!」という答えも返ってくるんだそう。いまや、ペットボトルを知らない人はいないだろうけれど、急須を知らない子ども達がいるんだそうな。
小学校3、4年生の子供たちに、急須で淹れたお茶を飲んでもらうと、どこの小学校に行っても必ず”美味しい!”という答えが返ってくるという。小さい頃の体験は貴重だ。「おかあさんに、100均で急須売ってるよって伝えてね。」そう声をかけるそうだ。
もともと子どもが好きな貴子さん。幼稚園、小学校での体験授業はこれからも続けていきたいと話してくれた。
林貴子さんリンク
池内後記
お稽古場は生駒駅の近く、気軽に体験に、と貴子さん。お点前だけでなく、家庭でのお茶の楽しみ方も教えていただけるそうだ。
また、4月12日には、30年以上のお付き合いがあるという唐招提寺の奥の院・西方院で法要茶会があるそうだ。写経もできるし、お煎茶とお抹茶の2席もあるとのこと。
急須でお茶を淹れることを知らない子どもたちが増えているという話はショッキングだった。もちろんティーバッグの手軽さ、ペットボトルの便利さは否定できないが、家族で一杯のお茶を楽しみながら、団らんのひと時を持つということの大切さをあらためて感じた時間であった。