英会話スクール・ゲストハウスオーナー〜ダシルバ久恵さん〜奈良で働く人々の英語力アップで外国人旅行者に居心地のいい奈良にしたい!
英会話スクール・ゲストハウスオーナー、奈良で働く人々の英語力アップで外国人旅行者に居心地のいい奈良にしたい!
2019版・BLOOMメンバーへのインタビュー企画」今年のインタビュアーは池内詠子。フリーアナウンサー・司会者として様々なジャンルの方々にインタビューをしてきた私、キャリアコンサルタントとしても多くの方々に話を聴いてきた。そんな私が、働く女性たちに仕事の話はもちろん、生き方、家族、心の声、夢、リアルな本音に迫ってみる。
この日は久恵さんがオーナーを務めるNARAigoto EENA HOUSEへうかがった。町家をリフォームしたゲストハウスだ。そのゲストハウスの居心地の良い和室で、久恵さんとの時間がスタートした。
第8回 英会話スクール・ゲストハウス経営 ダシルバ久恵さん
久恵さんは東京のお生まれ。3歳の頃、父親の転勤に伴いおじいちゃまとおばあちゃまが住む奈良に越して来た。
「母は手を焼いたかもしれない・・・。」という活発な学生時代。久恵さんは高校2年の時に、アメリカボストンへ約3週間の短期留学をした。語学の勉強と異文化を体験したいという目的だった。このときのホストファミリーがトリニダードトバゴ出身の移民のファミリー。黒人ファミリーとアジア人の女の子という組み合わせは、当時のアメリカでも不思議な組み合わせだったようで、滞在中幾度となく警察から職務質問を受けるという体験をした。久恵さんはこの時人生で初めて、人種の違いからくる問題に直面した。そしてこの時の体験がその後の久恵さんの人生の大きな影響を与えることとなる。
外国人支援を始めた大学時代
東京で女子大に入学した。しかし、第一志望ではなかったため、退学し、再度大学受験、見事志望大学へ。政治経済、東南アジアの経済について学んだ。
大学時代新宿で住んでいた。外国の方が多く、そこで久恵さんは住居差別を受ける外国人たち、バイトをしたくてもできない外国人たちの様子を身近なところで見ていた。
大学2年の時にあるNGO団体を知る。日本への出稼ぎ労働者の子ども、親の再婚に伴い日本に連れてこられた子ども、経済的に苦労している外国人ファミリー、本来は成績が優秀にもかかわらず言葉の問題等でドロップアウトしている子ども・・・そんな方々への支援、教育サポートをしている団体「 CCS世界の子どもと手をつなぐ学生の会」だ。
この団体で久恵さんは活動を始めた。そして、ちょうど大学を卒業する頃、この団体の発起人が病のため、その後を久恵さんが引きつぐことになった。
久恵さんはこの団体で代表として2年、事務局長として8年、あわせて13年間にわたり活躍した。生活の基盤となる収入を確保するために、派遣で母校で大学職員としても働いた。久恵さんの活動に、上司も大変協力的だったそうだ。
外国人の子どもに勉強を教えたり、保護者向けの教育制度に関する情報提供や進路選択におけるアドバイスを行ったりはもちろん、同時に日本の学生たちに国際情勢と移民・難民問題、国内の経済格差や多文化共生の必要性などグローバルな視点を持って欲しいという目的を掲げていた。
久恵さんたちが支援した子どもたちは1000人超、関わったボランティア学生も1000人を超えるそうだ。
いつしか久恵さんも30代半ばになっていた。その頃、お父様の介護が必要になり、2015年、奈良へUターン。
ここからが、久恵さんの奈良での生活編のスタートになるのだが、その前に久恵さんとご主人の出会いの話を書いておかねばならない。
ご主人との出会い、国際結婚
ご主人とは久恵さんが31歳の頃に出会った。ご主人は東京でALT(Assistant Language Teacher・外国語指導助手)や英会話の講師として働いていた。二人はConversation Exchangeで出会う。これを読んでおられる皆さんは、スターバックスなどで外国人と日本人が英会話レッスンをしている場面をご覧になったことがあるだろうか?あれをConversation Exchangeと呼ぶのだそうだ。お互いの言葉や文化を教え合うという意味でExchange(交換)となっているんだとか。
ご主人は“セントビンセント及びグレナディーン諸島”のご出身。久恵さんがアメリカ留学時代のホストファミリーがトリニダードトバゴのご出身だったこともあり、初代面から会話が弾んだ。
そして、久恵さん34歳の時に、結婚。ご主人の国、セントビンセント及びグレナディーン諸島で初めて彼のご両親に会い、結婚式を挙げた。
久恵さんには国際結婚ということでの躊躇、悩み等は一切なかったんだそうだ。
奈良での生活、起業
話を久恵さんが2015年に奈良にUターンしてきたところに戻そう。そもそもお父様の介護が必要になった際、奈良に行こうと提案してくれたのはご主人なんだそうだ。
奈良では、英語のメニューがない飲食店で困っている外国人旅行者、英語が通じず不便を感じている外国人旅行者をよく見かける。そんな方々の助けになることを何かできないか、夫婦二人で考えた。
そして立ち上げたのが、英会話スクールだ。
お二人の英会話スクールは個人向けのレッスンももちろんあるが、事業者向けのレッスンが特徴だ。奈良で飲食店や様々なサービス業を営む方々に英会話を身につけてもらい、サービスの中で活用してもらおうということだ。
さらに、久恵さんはおじいちゃま・おばあちゃまの代からある町家に目をつけた。ここで何かできないか・・・そして奈良でしかできない文化体験にこの町家を利用してみようと思いつく。
書道や手描き友禅の技法を用いたシルクストールへの絵付け、茶道を体験してもらう場所としての町家の活用だ。
さらに2019年の春から、ゲストハウスをオープンした。この日、私がおじゃました場所だ。一棟貸しのこちらは大人で3名 お子さまを入れて4名まで宿泊できる。庭をのぞむ縁側につながる和室、冷蔵庫や電子レンジなどを完備したミニキッチン、シャワールームもある町家ゲストハウスだ。
介護もしながら子育て中
現在、久恵さんはご主人と一緒に英会話スクールを、お姉さまと一緒にゲストハウスを切り盛りしている。奈良に住む方、働く方々の英語力アップに貢献し、奈良に旅行に来る外国の方が不便を感じないような奈良にしていきたいと願う。そしてゲストハウスでは快適に過ごしていただきたいと考えている。
久恵さんは奈良に来てから、お嬢さんを出産、現在2歳だ。子育てをしながら、お姉様やお母様と連携しながら実家のお父様の介護もし、スクールとゲストハウスのオーナー業もこなすという多忙な日々だ。
ご主人と久恵さんの英会話スクールにはキッズ向けレッスンもある。久恵さんは、子どもたちに英語はあくまでもコミュニケーションツールの一つに過ぎないということ、そして異なる文化や価値観・宗教を受容する姿勢とともに、そのツールを用いて何がしたいかが重要であるということを伝えていきたいと話す。子どもたちと一緒に奈良公園に出かけて行き外国人旅行者にインタビューをするという体験をさせている。子どもたちには質問から考えてもらい、実際にその質問を外国の方にすることで、ツールとしての英語を体感し、様々な考え方があることを知ってもらいたいという。
また、かつてNGO時代に行っていたイベント・・・それぞれの母国のお料理を披露するイベントを英会話スクールでも実現したいそうだ。様々な国の食べ物を通してその国の文化を知り、またどの国の文化も優劣なく素晴らしいのだということを知る機会にもなるからだと語る。
「子育て真っ最中で、将来のことなどとても考える暇はないんですよ。」言いながらも、これからやりたいことを語ってくれた久恵さん。ご家族3人の奈良での生活はまだ4年目、ハンナちゃんの成長とともに、お二人の活躍がとても楽しみである。
スクールのHP:http://vincy-english.com/
ゲストハウスのHP等:https://www.naraigoto.org/
池内後記
久恵さんによると、日本に来て、約16年のご主人は関西人の距離の近さや、フレンドリーさがとても好きなんだそうだ。人と人との直接のつながりの中では、国籍も人種も関係ない、その人自身を見ようとする。奈良に住むフレンドリーな人々が英会話力を身につければ、外国人旅行者には本当に心地よい場所になることは間違いないだろう。
久恵さんのゲストハウスは大変便利なところにあり、リフォームされた町家はとても素敵だ。茶道や書道の指導は、なんと久恵さんのお母様がなさっているそうだ。ゲストハウスにもお母様のお人柄を感じさせる書が飾られていた。久恵さん本人も茶道が好き、着物も好き、和の文化がとても好きだという。海外からの知人はもちろん、奈良に遊びに来る友人たちにも、久恵さんのゲストハウスをぜひ紹介したいな、と感じた。